球状トーラスによる革新的トカマクプラズマの立ち上げと電流駆動

期間

平成24年8月〜平成29年7月

拠点
日本側研究拠点:東京大学大学院新領域創成科学研究科
中国側研究拠点:清華大学物理工学科
韓国側研究拠点:ソウル大学原子力工学科

概要
本プロジェクトは、経済的な核融合発電を実現するための革新的な磁場閉じ込め概念である「球状トカマク」の炉心プラズマ物理に関して、日中韓の大学を中心とした研究機関での実験を軸とした共同研究を実施し、米国や欧州の国立研究機関における球状トカマク実験に匹敵する世界的水準の研究遂行体制を構築すると同時に、大学院学生ならびに若手研究者の育成に資する研究組織の構築を目的としています。

核融合発電
水素などの軽い原子核同士が非常に近い距離まで近づくと核融合反応が発生し、原子核に内包される核エネルギーが解放されます。原子核は正の電荷をもっているため、これらを近づけるためには電気的な反発力(クーロン力)を上回るだけの運動エネルギーが必要になります。つまり、非常に高い温度の電離ガス状態(=プラズマ)を実現する必要があります。
持続的な核融合反応を発生させるためには、温度、密度、エネルギー閉じ込め時間の3つのパラメータの積(核融合三重積)が大きい状態が必要となりますが、現在最も有力と考えられているのが強い磁場によってドーナツ型のプラズマを閉じ込める「トカマク」と呼ばれる方式です。現在国際協力の下でフランスで建設が行われているITERもトカマク型を採用しています。

球状トカマク
トカマク型は良好な閉じ込め性能と安定性を両立する配位であり、日本原子力研究開発機構のJT-60Uという装置では、実効的に核融合反応によってエネルギーを取り出すことのできる条件(臨界条件)が達成されています。このように優れた性能を有するトカマク型ですが、高い温度・密度のプラズマを閉じ込めるために非常に強い磁場が必要になるため、磁場を作りだす超伝導コイルが非常に高額になるという欠点があります。そこで、比較的小さい磁場でプラズマを閉じ込める(高ベータ)ために、トカマク型のドーナツを圧縮したような球状トカマクが提案され、実験による研究が各国で進展しています。これまでに、英国のSTART装置で40%のベータ値が達成され、その後継実験であるMAST装置や米国のNSTX装置ではトカマク型に匹敵する閉じ込め性能が実現されています。

研究課題
このように、経済的な核融合炉心として魅力的な球状トカマクですが、トカマク型よりもドーナツが圧縮されているため、中心部分にプラズマ維持のための機器を設置できないという問題点があります。トカマク型では、装置中心部分に設置されたソレノイドコイル(中心ソレノイドコイル)によって初期の電流立ち上げ・加熱が容易に実現されるのですが、球状トカマクでは中心ソレノイドコイルを用いることが困難であるため、代替手段の開発が急務となっています。本プロジェクトでは、日本、中国、韓国の各大学で行われている6台の球状トカマク実験装置の連携の下で、各種波動やプラズマ合体法を用いた革新的な電流立ち上げ・維持手段の確立を目指し共同研究を行っています。