高効率核融合の実現を目指した
高温プラズマの実験研究を行っています。
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核融合発電
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球状トカマク
■このように優れた性能を有するトカマク型ですが、高い温度・密度のプラズマを閉じ込めるために非常に強い磁場が必要になるため、磁場を作りだす超伝導コイルが大型化し、発電コストが増大するという欠点があります。そこで、比較的小さい磁場でプラズマを閉じ込める(高ベータ値)ために、トカマク型のドーナツを圧縮したような球状トカマクが提案され、実験による研究が各国で進展しています。これまでに、英国のSTART装置で40%のベータ値が達成され、その後継実験であるMAST装置や米国のNSTX装置ではトカマク型に匹敵する閉じ込め性能が実現されています。 | ![]() 球状トカマク(A=1.5)のプラズマ形状と、それを取り巻く磁力線(赤線)の例 |
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【キーワード】ベータ値:コイルによって作り出された磁場の圧力に対するプラズマの熱圧力の大きさ。ベータ値が大きいほど同じ強さの磁場で高い圧力のプラズマを保持できる。通常のトカマクでは10%程度が限界。 【キーワード】アスペクト比A:ドーナツ型のプラズマの大半径を小半径で割ったもの。小さいほど球状に近づく。 |
球状トカマクの課題
プラズマ合体と磁気リコネクション
UTST実験における研究課題
■球状トカマク合体生成におけるエネルギー変換効率の改善・高ベータ化の実現 | ||
精密な磁場計測、電子温度・密度計測、イオン温度・流速計測、波動計測を総合して、エネルギー変換過程を定量的に解明します。初期球状トカマクの生成および合体過程の最適化を行い、効率的な高ベータ化を実現します。 | ||
■合体生成高ベータ球状トカマクにおける流れの効果の解明 | ||
圧力勾配が非常に大きく、その特性長がイオン慣性長よりも短くなるような高ベータ球状トカマクは二流体平衡として記述され、電流と磁場だけでなく流れの効果が重要となります。プラズマ流の分布を観測することにより、流れが高ベータ平衡とその安定性について検証します。 | ||
■高ガイド磁場無衝突リコネクションにおける高速化機構の解明 | ||
球状トカマクの合体時にはリコネクションするポロイダル磁場に直交する非常に強いトロイダル磁場(ガイド磁場)が存在しており、リコネクション機構自体が大きく変容します。電流シート構造の微細計測などを通して、ガイド磁場リコネクションの機構を解明します。 | ||
■高ガイド磁場無衝突リコネクションにおける電子加速・加熱機構の解明 | ||
強いガイド磁場の存在が、リコネクション電場による直接的な粒子加速を生み出します。電子の速度分布を計測してその生成過程を解明すると同時に、高速電子由来の不安定性についても検証します。 | ||
■中性粒子ビーム入射による高ベータ球状トカマクの追加熱と維持の実現 | ||
合体生成された高ベータ球状トカマクを中性粒子ビーム入射によって維持・追加熱することができれば、高ベータ球状トカマク型核融合炉の現実的なシナリオを描くことができるようになります。合体生成された高ベータ球状トカマクの密度・電流を増加させ、柏キャンパスにある2機の中性粒子ビーム源を用いて2MW程度の入射を行います。 | ||
■分光法によるリコネクション電場の直接測定(共同研究) | ||
UTST装置で発生する高ガイド磁場リコネクションでは、プラズマ中に1kV/mを超える強い電場が過渡的に発生すると考えられます。原子が発するスペクトル線が分裂するシュタルク効果を用いて過渡電場の直接計測法の実現を目指しています。 | ||
■マイクロ波散乱による密度揺動観測法の開発(共同研究) | ||
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その他の研究テーマ
■極限的高ベータ配位・磁場反転配位(FRC)の自己組織化と性能改善(共同研究) | |
高ベータを極限まで追求した磁場閉じ込め配位が磁場反転配位(FRC)とよばれるもので、100%に近い磁場利用効率を有する反面、プラズマを長時間維持することが困難とされてきました。現段階での性能は決して優れているとはいえませんが、本質的に高い潜在能力を有しており、うまくいけば究極的な核融合炉心プラズマとなりえます。本研究室では、磁場反転配位の安定化、中性粒子ビームを用いた追加熱、低周波波動によるイオン加熱現象などの実験的検証を実施しています。磁場反転配位の内部には磁場がゼロとなる地点が存在し、波動励起の際には線形近似が成り立たないような複雑な挙動をすることが予測されており、基礎プラズマ物理として天文分野との関連性も注目されています。磁場反転配位と前述の球状トカマクとは、歴史的には全く異なった装置・実験手法として発達してきたのですが、近年になって両者の中間的な領域の存在が指摘されており、両者は全く別個のものではなく連続的につながるような概念なのかもしれません。新型装置UTSTを中心とした実験を通して、両者を統一的に取り扱い、超高ベータ領域に新たな可能性を探求しています。 | |
■内部電流系トーラス技術を応用した無電極プラズマ推進の開発 | |
プラズマ柱を貫く磁場をイオンサイクロトロン周波数よりも高速に回転させることによって、プラズマ中に周方向電流を発生させることができます。発散磁場下においてこのような周方向電流を維持することができれば、ローレンツ力による定常的な軸方向推力を発生させることができ、電極を用いないプラズマ推進(スラスタ)が実現できると考えられます。 |