国際展開
小野・井研究室では、プラズマ専門家の育成のため、学生の海外留学を推奨しています。具体的には、希望により修士2年くらいから海外の学会(American Physical Society等)での研究発表をはじめ、さらに成果があがれば、提携関係のあるプリンストン大学、英国カラム研究所等への派遣を通じて海外の研究者と対 等に議論できる経験を積んでもらいたいと考えています。特にプリンストン大学とは現在も2つの共同研究プロジェクトが進行中で、相互に人員を派遣して共同 実験を行うことにより多くの成果をあげています。2010年からは、小野・井研究室を中心とする国際COE研究ネットワークが日本学術振興会の先端研究拠点に選ばれ、日米のCOE組織が連携して学生を自由に派遣する「自由な留学」計画が始まりました。この計画では既に長期、短期で60人以上の学生を海外派遣し、さらに日米双方で学生を育てる体制が整いつつあります。具体的な、共同研究プロジェクトとしては、以下のようなものがあげられます。
- TS-3やTS-4、UTSTと姉妹関係にあるプリンストン大学プラズマ合体実験装置MRXとの共同実験では、太陽、宇宙から核融合まで磁化プラズマの共通問題である磁気リコネクションの物理の解明やプラズマ合体を用いた磁場反転配位の衛星などの核融合への応用を実験的に追求しています。
- 英国カラム研究所の大型球状トカマク装置MASTはTS-4の約倍のスケールを持っており、大研究所ならではの大出力加熱装置と高精細な温度・密度分布計測を用いた超高温領域の核融合閉じ込め実験を行っています。特に、合体・磁気リコネクションを用いたプラズマ急速加熱実験では大きな成果をあげており、その中心的担い手は学生、若手研究者です。
- ウィスコンシン大学とは、磁気リコネクションの理論・計算機シミュレーション解析で提携し、日本学術振興会の先端研究拠点を用いた理論・実験共同研究を進めています。
プリンストン大学などに長期留学する選択もあり、プラズマ理工学の基礎を固めた上で他流試合を行うことは国際的に通用するプラズマの専門家となるために極めて重要と考えています。
2010年からスタートした日本学術振興会先端研究点プログラム「実験室と宇宙のプラズマの自己組織化に関する国際連携」では既にプラズマ核融合分野の学生を必要な場所に必要な期間に自由に派遣する「自由な留学」プログラムが進み,多数の大学院生が留学をキャリアアップに生かしています。2014年9月からは,プラズマ核融合分野の東京大学-プリンストン大学間の学生留学をサポートする東京大学-プリンストン大学共同研究・教育プロジェクト“Educational Collaboration and Workshop for Plasma Physics and Fusion”が スタートします。日本学術振興会の2つのプログラムで運営するいわゆる「自由な留学」プログラムに加え,本プログラムを加えることにより経済サポートは更 に範囲を広げます。プラズマ核融合分野の大学院同士,学部同士の学生留学はさらに活性化し,現在,既に通常化している博士課程学生は勿論,修士,学部学生にも広がる予定です。
プリンストン大学MRXプラズマ合体実験装置
プリンストン大学プラズマ物理研究所(米国・ニュージャージー州)
MAST球状トカマク実験装置(英国・オクスフォード)
日本学術振興会先端研究拠点プログラム(日米欧COE共同研究プログラム)
近年の大きな進展は,小野靖研究室で開発してきたトーラスプラズマ合体・リコネクション加熱が極めて高出力で,これだけで核融合炉を簡便に点火できること見出したことです。その実証実験を小野靖研究室が英国のベンチャー企業Tokamak Energy社に協力する形で開始することになりました。新装置ST-40を建設して日英共同実験を行っており,既に多くのスタッフ,学生を派遣した結果,最大2300万度の超高温状態を合体だけで作ることに成功しました。